小学生は「フツー」に暮らせと勧める記事がどうかと思う件

 

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Photo by LendingMemo

(以前Google+に書いたものを転載)

非常に気持ち悪いと感じる記事が流れてきました.

データえっせい: 公立小学校6年生の勉強時間地図
http://tmaita77.blogspot.com/2013/04/6.html

3行でまとめると,

・「全国学力・学習状況調査」のテスト結果と(学校外)平均勉強時間が無相関
→ 学力上位常連の秋田と福井の小学生は東京よりも学業以外の時間が長い
→ ガツガツやらせるよりも,生活にハリを持たせることが重要

んなあほな・・・

テスト結果に最も影響すると考えられる学校教育の質(と量も)を無視して,そんなことが語れるでしょうか?
現に,早稲田の調査によれば,

両県の児童生徒の学力の高さは、教育委員会や教員の取組に独自性があるというよりも、各学校における教員が協力し合って、よりよい授業を求めて研究し、効果が上がるまで徹底的に実践していることによるものと考えられる。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2012/01/12/1314907_01.pdf

と報告されています.

秋田と福井は質の高い教育を学校で受けているのだとすれば(もしかしたら授業時間が長い可能性もある),学校外での勉強時間が平均値より短く(といっても平均値で10分以上の差があるわけでもない)ても,学力上位に位置しても不思議はないですよね.

このデータから生活の均衡の重要性なんて語れるはずもなく,それは筆者の思い込みへの誘導にしか過ぎません.最も校外勉強時間が長い宮崎県の小学生は生活の均衡がとれていないんでしょうか?東京よりも?

さらに気持ち悪いのは,これを参考になったとか言ってFacebookでシェアを繰り返している人達がいたこと.自分の頭でデータを解釈しようとしたのか疑問です.

元同僚の社会学者からは,この分析はEcological Fallacy(生態学的誤謬:集団に対して得られた結果を個人レベルで解釈してしまうことにより起こる誤り)の可能性を考慮せずにマクロデータの分析から個人レベルの学習方略の話にもっていくところにも問題があるとの指摘がありました.このコメントが,上の私の指摘を包含したダメ出しですね.

ブログで誰が何を書こうが構わないのですが,博士号の肩書と研究者としての経歴をちらつかせてエセ統計を撒き散らすのは害悪でしかなく,さすがに酷いと思ったので本記事を書きました.

“小学生は「フツー」に暮らせと勧める記事がどうかと思う件” への1件の返信

  1. 舞田氏が生態学的誤謬を考慮していない、または知らないように見えるのは昔からです。
    以下、ご参考。

    「日本の学力研究の現状と課題」
    川口 俊明
    (福岡教育大学准教授)
    http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/09/pdf/006-015.pdf
    p.11
    「また,舞田(2008)は,東京都足立区の公開データから,校区の高学歴人口率やホワイトカラー率から推定される値よりも高い成績を収めている学区(=努力地域)の特徴について説明している。ここでも,学校規模・学級規模が小さい地域・学校の学力が高いことが示されている。しかし,この分析は集計データを利用しているため,生態学的誤謬(ecological  fallacy)の問題を回避できないという問題がある。」
    p.14
    「舞田敏彦(2008)「地域の社会経済的特性による子どもの学力の推計」『教育社会学研究』82,165-84.」

    とは言え、舞田氏から生態学的誤謬の可能性のある相関ばなしを取ると何も残らないような気も。

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